前回までのあらすじ

「しかたないわね！」　そのおばさんは、決心して立ち上がった！
「こうなったら、バスＨｏｐｐｉｎｇしかないわ！　海沿いに、東へ、東へとバスを乗り継いで行くのよ！」
そう決めればあとは早い！
「東へ向かうバスはどれ！？　ANDORA行き！？　いつ出発なの！？　あら、もうすぐ！？　じゃあキップ買うわよ！？」
こうして、さきほどの赤毛のおばさんだけでなく、数人のインド人（ターバンを巻いている）、さらに数人の国籍不明な若者まで集まり、
大勢でANDORA行きのバスに乗り込んだのであった！

さて、ANDORA行きのバスは、WRCのサービスパーク見物に行くのにも使った路線だ。 都合３回使っている。 見覚えのある道を走って行くと、やがてサービスパークが見えてきた。 Imperia Port Maurizio駅のそばだ。 ヘリポートからひっきりなしにヘリコプターが飛び立っている。 それをチュニジア人の学生さんが不思議そうに眺めているので、 「あれはWorld Rally Championshipの会場だ。」　と教えてあげる。 ちょっと喜んでいるらしい。

赤毛のおばさんと雑談をする。 オーストリア人で一人旅だそうだ。 曰く、「オーストリアには、カンガルーはいないわよ（爆）」 なんと、夕べはANDORAに宿泊し、今朝サンレモまでバスで来たそうだ。 そして今、再びANDORA行きのバスに乗っている・・・・（笑） 「同じ道をまるまる戻るなんて、まったくBig Jokeだわ！・・・・ぶつぶつ」

バスに乗ってしまえば、興奮もおさまって、景色を見る余裕も出てくる。 窓の外は、地中海に面した有名なリゾート地、イタリアン・リヴィエラ海岸。いたってのどかな風景だ。 しかし、白砂のビーチは非常に少ない。基本的に岩場の海岸が多い。 このため海水浴場はほとんどがプライベートビーチで、どこでも有料だそうだ。

約１時間で、ANDORAに到着。けっこう大きな町だ。 我らの隊長のおばさんは、バスの運転手から、さらに東へ行くバスの情報を聞き出している。 ちょうどこのバス停から、SAVONA行きのバスが出るらしい。 さらに情報収集のためすぐ目の前のカフェに入ってみる。 そこにはバスの時刻表が貼ってあった。　次のバスは１２：１５。　いい感じじゃないですか！？ それにしても、こんな感じで順調にジェノヴァに到着できても、ミラノまでは、まだ半分の距離が残っている。　どうしたものか？ そこで、ジェノバからミラノは、「ワリカンでレンタカーなんてどう？」　と提案してみた。 「そうねえ、タクシーで行くよりは安いわねぇ。　免許も持っているし。」 さすが我らの隊長。マルチリンガルで、PDAも使いこなし、車の運転もＯＫの行動派である。 赤毛のおばさんは「じゃあ、ボローニャにも寄ってちょうだい（笑）」

いや〜、緊迫感が続いたんで喉が渇いたね。　水を買おう。
しかし、カフェのカウンターにはでっかい１Lのボトルしかない。
「小さいのはないか？」と聞くが、「ない」というので、ファンタ・オレンジ（缶）を買った。
ひさしぶりに飲んだけど、日本のやつより甘さが弱い気がする。
まあ、これぐらいがちょうどいいんだけどね。

赤毛のおばさんがテーブルに座っていると、 カフェの店主が「座るんなら何か注文してくんねぃ！」と言うので、 カプチーノとサンドイッチを注文したらしい。 カプチーノはすぐに出てきたが、サンドイッチはなかなか出てこない・・・・ やがてバスの出発時刻が迫ってくる・・・・ 思わず出たセリフは、「Come on, baby！」だそうだ（笑）

ほぼ時間通りにバスが来た。　SAVONAからの折り返しだ。
みんなで、ぞ〜ろぞ〜ろと乗り込む。　（赤毛のおばさんは、やっと出てきたサンドイッチを手に持って）
運転手からキップを買う。　SAVONAまで一人４．５０ユーロ。

やがて、バスは順調に走り出す。 晴天で気持ちの良い陽気。　地中海の潮風がさわやか。 みんなすっかり寝てしまう。 ←途中ででっかいバウが乗ってきた。　のどかだねぇ。

いや〜よく寝た！ ふと気がつくとSAVONAに到着していた。 伝統的な陶器と港で有名な工業都市（だそうだ）

バスが到着したのは、街の中心にある公園の一角。
あちこちにバス停があり、次にどのバスに乗ればよいのか不明だ。

隊長のおばさんが、運転手にいろいろ聞いているが、いまいちわからないらしい。
そこで、近くに４、５人のグループがいたので聞いてみた。　（こういう非常時には、話しかけるのが全く苦にならない。我ながらすごいね。）
「Senta, scusi ! Vorei andare a Genova. Autobus fermata?」
（ちょいとすんません、ジェノヴァへ行きたいんすけど、バス停はどこっすか？）
ガイドブックからいただいた、なけなしのイタリア語だ。
とたんに、若いお姉ちゃんが「ぺらぺらぺ〜ら、なんたらかんた〜ら」　早口のイタリア語で怒涛のごとく答えてくれる。
イタリア語が通じるもんだと思われたのだ。　下手に知ったかぶりのイタリア語を使うのはよくないね（笑）
やがて、気づいてくれて、少〜しだけ英語の使える男性にチェンジ。

でも下手な英語よりも、やはり世界の共通語「身振り手振り言語」が一番よく通じるぞ（笑）
「ジェノヴァへ行くバスはない。電車はまだストライキしている。でも夜になると動き出すと思う。夜になったらまたここに来るといい。」

夜まで待てるかいな！　ましてやストが終わって電車が動き出すとも思えんな・・・・・・
などと考えながら話をしていると、後ろの方から「お〜い！バスが来たぞ！」
どうやら次のバスを見つけたらしい。　あの人たちはジェノヴァへ行くバスはない、と言っていたが・・・・・
とにかく、我らの隊長が乗るのだから間違いはないはず！　バスの行き先もわからずに乗り込んだ。
（売店で大急ぎでキップを買おうとしたら、売店のおばちゃんが「２０ユーロ札？だめだめ！小銭にしてちょうだい！」
　などとゴネていたが、こちらのタダならぬ雰囲気を察すると、素直にお釣をくれた。　ちゃんとお釣あるやんけ！）

大急ぎでバスに乗り込む。

ところが、サンレモ脱出隊の一部である、インド人のグループが乗ってこなかった。
隊員の白人のおじさんが呼びに行ったのだが、どうやら彼らなりに別の方法を探索するらしい。
ここでお別れとは、ちょっと寂しいぞ。

これまた、のどかな海岸線を東へ向かって、バスは走る。 1.5ユーロとお安いバスチケット。 おかげで乗車時間はたった２０分の近距離で終点だった。 これじゃまだまだ先は長いのぉ・・・一体地図上でどの辺りまで来たんだ？

途中、若い３人組がえらい荷物を持って乗り込んできた。
旅行か？　でも持つところもないようなゴミ袋風のビニールに衣類やらなんやら滅茶苦茶に入っていて、
それを一人６個づつくらい持っている。
なんだったんだろうか？

さて、ついた町はVARAZZE。海水浴場の前にある小さい町である。 さらにバス停の前には別の団体がいる。　大方はやはり電車が動かずお困りの方々。 その中でドイツからきたカップルが話掛けてきた。 彼らもジェノヴァに行きたいのだが、バスが１６：３０なので、ひたすら待っているとのことだった。 うわ〜、２時間も待つのはかなりのロスタイムとなる。 この調子じゃジェノヴァに到着するのすら夜になりそうな気配（泣） 順調に乗り換えてきたのに、ここで大きな障害だ。

それを聞いた我らのリーダー・マダムは、こうなったらもうTAXIで行くわ！と断言。

「他にタクシーで行きたい人は？」
一瞬のヒラメキが運命を左右する。　え〜い！　うちらもＴａｘｉじゃ！　挙手！
隊員の学生さんは（チュニジア人）は「あなたと一緒に行きます！連れてってください！」（笑）
他にも数人が手を揚げた。合計で１０人だ。

リーダーは、近くの商店でタクシー会社の電話番号を聞き出し、おもむろに携帯電話で電話する。
だが、タクシーも忙しいのか中々空車がないらしい。　来るのは何時になるかわからないようだった。

そして、ジェノヴァまでの気になるお値段は、約５０ユーロとのこと。

まあ、4人づつ Let's Go Dutch（ワリカン）すれば、ムチャな金額ではない。
しかし、この金額を聞いてか、遠慮してか、「うちらはバスを待つことにするよ」　ドイツ人カップルは脱落した。
これで８人。　ちょうどタクシー２台ぶん。

この間に、おかみちょんは目の前のレストランで水を調達し、この先いついけるかわからないからトイレを済ませる。

お昼は食べていないが、緊迫状態のアドレナリン分泌により、あまり空腹ではない。
いちおう無印良品の乾燥梅干なんぞ食べてみたけど、何かお腹に入れたほうがよいだろう。
ということで、だんなちょんは、向かいにあったＢａｒ（バール）で、サラミとチーズのしょぼいサンドイッチを買いに。（激安５０セント）

タクシーが来るまで暇だったので、英語が少々できるチュニジア人とカタコト英語で会話。
彼はミラノで学生をしており、明日学校があるからなんとしても今日中に戻りたいとのこと。
すごいのは母国語であるアラビア語（ベルベルだったかなぁ・・・）、イタリア語、ドイツ語ができる。英語も少々。
何年もかけて英語習っていたというのに我々とは学習に対する貪欲さが全然違う。えらいのぉ。
パキスタン人は友達ではなく、バスで知り合ったそうだ。彼もイタリア語がちょっとできるらしい。

やっと１台タクシーが来た。

まずは、リーダーを含む白人組４人が乗り込む。
これで少なくとも彼らは、ジェノヴァまで行けるだろう。　きっとジェノヴァから先もどうにかなるはずだ。

残るは、我々２人と、チュニジア人学生くん、パキスタン人の若者の計４人。
リーダーは、「もう１台タクシーを呼んでもらったから、待ってるわよ」　と、気をつかってくれた。　嬉しいっす。

その後、もう１台タクシーが来ると、
リーダーは「ジェノヴァ・プリンチペ駅のタクシー乗り場で待ってるからね」と言って、先に出発しようとした。

しかし、これが今生の別れになるような予感がする・・・・・

そこで、だんなちょんは、秘蔵の例のものを取り出し、リーダーに手渡した。 我が家のWebサイトの名刺だ！！　（SSまで連れていってくれたＧさんにも渡したやつだ） かなりウケた（笑）。 赤毛のおばさんも「私にもちょうだい！」

何人かとはここでお別れだ。
さきほどのドイツ人カップルに手を振る。　迷彩柄のズボンをはいた白人おじさん（サンレモから一緒）も手を振っている。

そして２台のタクシーは、別々にジェノヴァを目指す。

タクシーはＦｉａｔ。　をを！外車だ！（イタリアでは普通の国産車ですって！（笑）） 高速道路に入っていく。　初のヨーロッパ高速道路の体験〜♪ 運ちゃんもまさかジェノヴァなんて遠出するとは思っていなかったらしく、 「ちょいと、給油してっていいかい？」といい、高速のガソリンスタンドに寄る。 ここはイタリア、ラテンの国。さぞや高速では激しい運転が見られるか！？ と思いきや、結構安全運転。 どの車も９０キロ程度で走行。　ちょいと期待してたんだけどねぇ（笑）

３０分も走ったころ・・・・・タクシーのメーターはすでに５０ユーロになった。
チュニジア学生くんは、「もう５０ユーロになっちまった！」　と、グチをこぼす。
やっと高速道路を降りる。すでにメーターは６０ユーロ！　「いつになったら着くんだ！？」　彼はもう半泣き（笑）

結局、計４５分ぐらいかかってジェノヴァへ到着。

メーターは６２ユーロだったが、「６０ユーロでいいよ！」　ひとり１５ユーロ。　いやいや安いもんだ！

ジェノヴァ駅に到着。ここはかなり大きな都市だ。

どこかの旅行関係BBSで、ストでも特急列車だけは動いていた、というカキコを見た事がある。
今回もそれに期待せずにはいられない。
だが駅前に人だかり・・・まさか動いてない？　バス乗り場も結構混雑しているし〜。　むむ〜。

さて、タクシー乗り場を見渡せどリーダーのおばさんがいない。
ジェノヴァとつく駅は２つある。まさかPrincipeじゃない方だったのかなぁ、と今さらながら不安に。

ジェノバ・プリンチペはサンレモへ行くときに乗り換えをした駅だから馴染みがあった。

目の前の時刻表ボードを見ると・・・(ﾟдﾟ;）！！！

をを！ミラノ行きの特急列車が表示され、ホームのナンバーが書いてある！
他の急行列車などは、備考欄になにやら文字がならんでいる。（たぶん「運休」の意味）

噂どおり、主要な特急列車だけは動いてたぞ！！うえ〜ん！！　みんな大喜び！
そのミラノ行きの列車は１６：３９、わずか２５分後。
これを逃すと、次はいつになるやら不明！　すばらしい！
（あとはベネチア行きも出ているらしい）

しかも、次の瞬間！　リーダーの姿が見えた！　おばちゃ〜ん！　おかみちょんもう感動の再会に涙目（笑）
聞くと、タクシーの中に荷物を忘れてきて、タクシー会社へ電話したり、警察へ行ったり、と大変な目あっていたらしい。
で、さっき乗ったタクシーが引き換えしてくるのを待っているのだとか。
波乱に継ぐ波乱ですな・・・。

赤毛のおばさんも、「ミラノまで行けば、ボローニャ行きもあるかも？」と判断し、いっしょにミラノへ行くことに決定。

さっそくキップを買う！　サンレモからのキップは急行のお値段だったので、特急との差額だけで済んだ。
EuroStarはほとんど全席指定なので、「座席指定か？」　と聞くと、「指定はいらん！」と言う。
やはり今日は特別らしい。

チュニジア学生君は、「キップの買い方がわかんないんだ。手伝ってくれ！」などと言う。
おいおい、君、イタリアに住んでるんだろ？（笑）

Genova P.P−＞Milano Centrale　というメモを作ってあげたので、これを使って無事に買えたらしい。

やがて、リーダーのおばさんの荷物も無事に戻り、ホームへ出る。

もう大丈夫！　あとは列車がミラノまで連れていってくれる！ 落ち着いたところで、記念撮影だ！ だいぶ人数は減ってしまったけれど、 ここまでいっしょに苦労を共にしてきた仲間だ。　感慨深いぞ。 左からパキスタン君、おかみちょん、リーダー（隊長）のおばさん、 赤毛のオーストリアおばさん、チュニジア学生くん。（撮影はだんなちょん） リーダーのおばさんも「写ルんです」を取り出し、パチリ♪

かれらも現代人だ。メールアドレスを持っているとのことで、メアドを教えてもらった。
後日、この画像を送ることを約束。

やがて、予定の時刻通りに、ミラノ行きの列車はやってきた。
どこから来た列車なのかよくわからないが、そんな些末事はどうでもいいのだ（笑）

こうして、６人は無事に目的地のミラノへ向けて、移動を開始したのだ。

バスを３本＋タクシー 今にして思えば、なんと順調だったのだろう！ 最後にタクシーを使ったのも大正解だ。 おかげで、わずかに走っていたミラノ行き特急にも乗れた。 これもすべては、我らのリーダーおばさんの判断力のおかげ。 赤毛のおばさんも「彼女は我らのエンジェルよ！」なんて誉めてた（笑） いや〜、人生、生きてりゃ、どうにかなるもんだね。(ノ￣∇￣)ノ

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